コスプレをするにはどこかの許可が必要なのでしょうか
キャラクターコスプレというのは、原作漫画やアニメを元に衣装などを作ることから、コスプレをする際には著作権がありどこかに許可を取る必要があるのでしょうか。
答えは、個人がコスプレを楽しむだけでは許可を取る必要はありません。
自作して自分で楽しむ分には、どこにも申請などは必要ありません。逆に出版社などからしてみれば、勝手に宣伝をしてくれていますので、作品やキャラクターのイメージを著しく壊していなければ黙認をしているというところです。
(一部には、コスプレをあまり好まない出版社もあると言われていましたが、これだけ一般的になりますと止めることは難しくもなってしまいます)
またコスプレイベントに関しましては、主催者が会場でコスプレをすることで許可を取り施設を借りていますから、主催者から指定されたエリア内であれば別に許可を取る必要はありません。その代わりに施設の規約に従うことが大前提であり、包帯や血ノリはNGなどの細かい規定がある場合があります。
個人で公園などでコスプレをして撮影を行う場合には、その施設の管理者に問い合わせて確認(許可)を取る必要があります。無断で短時間で撮影して引き上げることを「ゲリラ撮影」「野良レイヤー」とも言いますが、付近の人に不審がられて警察などへ通報されないように注意しましょう。
警察沙汰になることは、コスプレ全体の世間に対するイメージが悪化してしまうことから、コスプレファンからは総スカンを食らいます。
個人で楽しむのは複製権というものが認められています
この著作権があるものでも、個人で楽しむことに関してはコピーなどが認められています。TV番組を録画(複製)して自分で見る限りはOK、というのと同じです。
同じような著作権がらみの質問で、「痛車を作りたいけどイラストの使用などで申請が必要か」という書き込みも見かけることがありますが、こちらも同じです。
個人で楽しむ限りにおいては、著作権には複製権というものが認められています。
しかし、TV番組を不特定多数に対してネット上へ公開してしまうことはNGとなります。はっきり言いまして、今の時代はコンプライアンスが厳しくなっていますので捕まります。同様に痛車用のキャラクターシールを、施行業者さんが印刷(複製)して販売してしまうのは完全にNGとなります。
話をコスプレに戻しますと、つまりは自由に好きなキャラクターのコスプレをして写真を撮って公開したり、コスプレイベントへ参加することは、出版社などに許可を取る必要はありません。
しかし、同人でコスプレROMや写真集の販売、製作したコスプレ衣装の販売となってまいりますと微妙で少し事情が異なりややこしくなります。
コスプレ衣装の販売と著作権
個人がコスプレをすることは完全な自由なのですが、コスプレ衣装やウィッグを販売することに関しては少しややこしく、同人誌と同じように二次創作のグレーな部分(著作権者が黙認している)が存在します。
購入することは、法律的には何ら問題はありません。
同人誌と異なる点は、元ネタであるキャラクターは2次元であるのに対してコスプレ衣装は3次元と立体的であるという点です。同じく3次元化するフィギュアの立体化とも違い、コスプレ衣装ではきちんと人が着られるように、さらには綺麗に作品中のキャラクターのシルエットが再現できるように創作性が求められます。(フィギュアでも創作部分はあるでしょうけど)
とはいえ、そこに3次元化する際のアイデアに創作性があるにしても、その衣装を見た人が「これって○○のキャラだよね」と認識が出来る(感じる)のであれば、「著作翻案権」が成立するという考え方もあります。
「翻案権」とは、
既存の著作物に依拠し、かつその表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて新たに・・・・・・表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。
ただしこの翻案権は、元ネタが鋭角であるのに対してコピー商品では角を丸めただけで否定された判例もあることから、非常に微妙なものであるとも言えます。これを仮にコスプレ衣装で当てはめますと、カラー(色番)が少しでも違えば法律的にはNO、フリルの形状が少しでも違えばNOとなります。
だから「グレーである」と書きました。
実際に過去にコスプレ衣装が問題となり摘発されているのは、仮面ライダーなどの実写作品のコスプレ造形を、ヤフオクなどで不特定多数へ販売した例に限られています。実写作品のコスプレ衣装を制作して、頻繁に友人などに有償で譲る場合には注意が必要です。(業務とみなされる)
コスプレの著作権に関して言えば、コスプレ衣装の販売だけでなくウィッグも関係してまいりますし、コスプレROM写真集等の販売にも問題点があります。さらにはコスプレやキャラクターのダンスをyoutubeで公開、広告収入を得るユーチューバーはどうなんだ、ということまで関わってきており、これら全てのルールが未整備なわけです。
コスプレの原作への貢献度
元々コスプレ趣味というのは、個人の自作から発展してきたものであるために、版権の許諾というビジネス要素が抜け落ちたまま市場が大きくなってしまいました。
個人や中小企業が出版社等へ申請を行っても、規模が小さいために門前払いか無視をされてしまいます。出版社側も全ての作品と商品の版権管理をわずか数人で回していることから、小規模の申請に関わっているほどヒマではないからです。このため、大きな金額で定期的に申請してくる企業との付き合いを優先させます。
この大手企業が従来のルールしか見ていない間に、隙間をぬうように中国系を中心としたコスプレ衣装を作って販売するショップや個人が乱立してしまったのが今の状況です。
この無版権の問題点は、コスプレに関連するビジネス(コスプレ衣装、ウィッグ、コスプレROM写真集等)が原作へ利益を還流していない点にあります。少なからず、そのコスプレイヤーは作品やキャラクターのファンであるにもかかわらずです。
版権料というのは、出版社や原作者へ資金を還流して次の作品を生み出す原資となるためのものです。
コスプレイベントでの作品の宣伝という意味では貢献をしているものの、無版権のコスプレ衣装では実際のお金の部分では原作へは何ら貢献をしていないのです。
コスプレの解は一つではありません
無版権のコスプレ衣装は"海賊版"だから、原作のためには版権が許諾されたコスプレ衣装を買いましょう、という意見が掲示板等で見ることができます。ある意味正論、優等生の模範回答です。
この場合、版権が許諾され販売されているコスプレ衣装が自分の思い描いているイメージと違っていたらどうでしょうか?
また、どうしても高価なものは高校生などでは手が届きません、初心者ほど公式衣装には手が届きにくくなっています。
コスプレというのは、これだという「正解」がありません。"公式"衣装というのは、たくさんある"解"の中の原作側がイメージする一つの"答え"にすぎないのです。
100人がいれば100通りの受け取り方(イメージ)があるわけで、フリル一つ取ってもいろんな形があり、一つを押し付けるということは今の多様性の時代にはそぐわないのです。ましてやコスプレという趣味は、隣よりも目立ちたいという自己主張の極みですから、メイクや衣装を含めて他人と同じ結果をヨシとする人は少ないのです。
考えてみてください、もし電車に乗り合わせた隣の人が、シマムラやユニクロで買った同じ洋服を着ていたとしたら!?
一番避けたいシチュエーションですよね。
価格にしてもそうです、2万円ほどを出せる人は公式衣装を購入出来ますが、5,000円しか衣装に予算をかけられない人はどうすればよいのでしょうか。お金が無ければ自作をすればいいと言うのは簡単ですが、自作スキルの無い人もコスプレを楽しみたいのです。
他にもマイナーなサブキャラクターのコスプレをしたい人、昔のキャラクターのコスプレをしたい人など、公式はビジネス色が強くもあることからある程度の数が揃わないと製作をしてくれません、マイノリティは切り捨てられています。それに、在庫リスクを嫌っているのか品切れになるのが早すぎます。
現在のコスプレ市場では、そういった"公式"衣装では納得・満足の出来ない人達を無版権の衣装がカバーしている状況にあります。
すなわち、公式衣装では市場の要求の全てをカバーし切れていない現状があります。
新たなルール作りの必要性
ハロウィンの拡大にも見られるように、無秩序にコスプレ市場が大きくなっていることから、今コスプレ衣装の通販に
急激に制限をかけようとしますと様々なところで歪みが生じ、コスプレファンの拡大に冷や水をさしたり、反発も招きかねません。
ここで一番避けたいのが、せっかく今は表に出ているコスプレ衣装通販ショップが、昔のように地下に潜ってしまうことです。地下に潜りアングラ化すればそれだけ詐欺などの危険度が増しますし、暴力団等の資金源にもなりかねません。これは10代後半~20代がユーザー層のメインの趣味としては、非常に都合が悪いことです。
ですが、今後さらにコスプレ市場の拡大が予想される中では、このまま無秩序のまま拡大をさせるわけにもいかないでしょう。何よりも、スタート地点にある原作への資金の還流がされないことは、一番の問題です。出版社側としても、現時点で相当額の版権料を取り漏れていることになるわけです。
さらには、予算の限られた高校生や初心者ほどに、安いコスプレ衣装の購入で「衣装が届かない」「サンプル写真と違う」などのトラブルに巻き込まれやすくなっていることは、大きな問題でもあります。
そこで衣装購入の安全性を確保しながら、市場の要求に応えるような既存のルールとは違う新たなルール作りが必要とされています。既存のルールでは制御できていないのですから、全く新しい仕組みが必要であることは明白でしょう。
コスプレイヤーのユーザーファーストに立ちますと、いろいろと現行制度に不満点はあるのですが、関係各位には実情を踏まえた上で検討をお願いしたいところです。それぞれに、いろんな考え方があるとは思いますが。