イベント自粛、新型コロナウイルスは何が怖いのか
国家の威信をかけた一大イベントでもある東京オリンピック2020が2020年7月の開催を断念、急転直下2021年夏へと延期の決定がされました。規約などから、2020年内に開催ができなければ「中止」もあり得ただけに「延期」を勝ち取ったのは収穫とも言えます。
さて、その要因となっているのが世界的にパンデミックに陥っている「新型コロナウイルス」の感染拡大による影響です。これの厄介なところ、大騒ぎをしている理由は治療する薬が無いということにあります。
通常のコロナウイルス、いわゆる"風邪"にかかり医療機関へ行きますと菌やウイルスを減らすための"抗生剤"が処方され、これを飲んで2~3日休んでいれば治るわけです。が、この「新型」には既存の"抗生剤"、いわゆる薬が効かないのです。
それでは感染者は入院してどうしているのかと言えば、人間が本来持っている"免疫の抵抗力"に頼り治癒させるしかない、というのが今の状況です。
また、免疫力や体力が弱い高齢者などは重症化することが多く、そこへ糖尿病や心臓病などの基礎疾患を持っていますと、命の危険に脅かされることとなります。タレントの志村けんさんが体調不良を訴えて入院してから肺炎で亡くなるまで10日あまり、長年の喫煙習慣のせいとも言われておりますが、この急激に状態が悪化するのも新型コロナウイルスの特徴だとも言われています。
それでは、体力も免疫力もある若い人は軽い風邪症状だけで終わるのかと言えばそうでもなく、10代20代でも亡くなる例が海外では報告されており、死亡率がゼロでは無いところが怖いところでもあります。高齢者までも含めた全体の致死率5.7%に対して、10~30代の致死率が0.2%程度と公表されていますが、それでも感染者500人に対して1人の若い人が亡くなる数字であり、学校や学年で大規模なクラスターが発生すれば身近で知っている人1人が亡くなるという確率でもあるのです。
ちなみに交通事故で死亡する確率は全国平均で5万人に1人(東京はもっと低い/10万人に1人で全国ワースト5位)であることから、この500人に1人という数字は交通事故死の100倍に相当し、いかに高い死亡率かが判ります。
この新型コロナウイルスのもう一つの怖い特徴としましては、感染力が非常に強いと言われており、空気中に浮遊しているエアロゾルを吸入したり、角膜(目の周囲)からも感染するとも言われています。このため、マスクなしで対面で会話しただけで感染するともされており、ライブやカラオケ、ナイトクラブのようなおしゃべりをするようなお店での感染例が増えているようです。
さらには通常、細胞膜を持たないウイルスは空気中では長い時間生きていることはできないのですが、この新型コロナウイルスは空気中では3時間程度、プラスチック上では72時間(3日間)も生き残っていたという報告があります。
まだその特徴がよく判っていない新型のウイルスということもあり、現時点では打つ手無しというのが実際のところなのです。唯一の対策が、特効薬やワクチンができるまでの間、少しでも感染する人の人数を抑えるしかないのです。それで連日、「不要不急の外出をしないように」と小池都知事を始めとした各都道府県の知事が躍起になっているのです。
その感染力の強さから、東京オリンピックだけでなく人が集まり密集する大小様々なイベントが中止や延期へと追い込まれています。
ニコニコ超会議に続きコミケC98と次々にイベント中止
コスプレが関係する全国レベルのイベントだけを見てみましても、まだ感染拡大の注目がクルーズ船に集中していた時期の2月9日(日)のワンフェス[冬]は開催できたものの、その後の大規模イベントは次々と中止となっています。
-
東京オリンピックの影響を受けるワンフェス2020[冬]
ワンフェス、新型コロナウイルスのせいで入場者減? ワンダーフェスティバル2020[冬]が、本日2月9日(日)に開催されま ...
イベントの開催ができたのはこの2月中旬あたりまでで、3月以降のイベントは概ね開催の1ヵ月前には中止の決定が下されています。
主なコスプレ関連で中止されたメジャーイベントは、
- 日本橋ストリートフェスタ
2020.3.15 [SUN] - アニメジャパン2020
2020.3.21 [SAT]-24[TUE] - ニコニコ超会議2020
2020.4.18[SAT]-19[SUN]
この他にも大小様々なローカルイベントが中止となっています。
そして、ゴールデンウィーク開催となったコミケC98の中止の決定が発表されたのが、やはりほぼ1ヵ月前となる3月27日(金)でした。その直前(3/15にはサークル当選発表があった)まで、開催へ向けての準備が進んでいたことを考えますと、やはり準備会としては実施したかったのだろうなということは想像に難くありません。
ただし、コミケC98の2週間前の大規模イベントでもある「ニコニコ超会議2020」が中止となっていることからも、ここからの2週間で事態が大きく改善するとは到底思えない状況から、プロ野球の開幕やJリーグの再開と3月末から4月のイベントが次々と中止となっていたことから考えますと、コミケC98の中止はサークル当選発表の前、もっと早く決断されてもよかったと考えられます。
当然ながら、同人誌の印刷所への原稿の入稿や企業では専用グッズの製作など、1ヵ月前では間に合わない費用がかかるものもたくさんあるわけです。
コミケC98後のイベントで中止が決定しているものは、
- 静岡ホビーショー
2020.5.13[Wed]-17[SUN]
すでに5月後半のイベントも1ヵ月前を待たずに中止が決定されているものもあることから、5月もイベントの開催は絶望的であると言えます。
コミケ中止の理由は"要注意"の3密に該当
4月7日(月)の夕方には、その前の週末に首都圏で感染爆発がおきつつあることから、「緊急事態宣言」が東京を始めとした1都3県や大阪圏に発令されました。不要不急の外出を控え、仕事や学校はテレワークを利用しましょうということになります。期間は5月6日までの1カ月間となりますから、ゴールデンウィークが丸々この期間にかかるということになります。
このゴールデンウィークに変則開催の予定だった100回目を目前としたコミケC98、多くの犠牲を払い中止の決定をせざるを得なかった理由とは何なのでしょうか。
ここに出展予定だったサークルさん、出展参加料ははたして戻ってくるのか!?
また、すでに印刷所へ依頼を出してしまいお金を払い込んでいる人も大勢いらっしゃるかと思います。この投資が全部とは言いませんが、無駄となる可能性も出て来るわけですが。
コミックマーケットは、世界的に見てもメッカ巡礼に次ぐ混雑率と言われています。その人混みは、朝のラッシュ時の新宿駅構内に相当します。
コミケへ行ったことが無い、朝の殺人的な新宿駅を知らない方であっても、世界でもトップクラスの混雑と言われれば「すごく人がいっぱい」ということだけは解っていただけるかと思います。
そんな場所でありますから、他のイベントにも増して東京都や厚労省が繰り返して注意喚起をしている『3密』に該当してしまうのです。
step
1換気の悪い密閉空間
各出展サークルは西館・南館といったホール内に詰め込まれて配置されています。大きなイベントホールとはいえ、エアコンが効いている屋内であり、「コミケ雲」が噂されたように空気の滞留はどうしても発生します。特に最新の南館はエアコンの効きもよく、これはそれだけ外気との換気がされないということを示しています。
step
2多くの人が密集
1日15万人とも20万人とも言われる人々が来場します。サークルが配置された狭い通路ではすれ違う人とも肩が触れ、企業物販や人気サークルともなれば大行列ができて前後の人との距離も近くなります。コスプレ会場に至っては、エリア内から抜け出ることもできないくらいの身動きができない混雑となります。
step
3近距離での会話や発声
推しのサークルでは会議テーブルを挟んだ約60cmの距離で、対面で会話をします。周囲も騒々しいことから、自然と大きな声にもなり、飛沫も飛び散るのは確実です。屋外のコスプレエリアであっても、アップでの撮影や混雑により自由に後ろへ下がれないカメラマンと被写体のコスプレイヤーとの距離は近く、ポーズ指示などの会話をすることとなり感染リスクが増します。
コミケではこれら以外にも、1時間以上にも及ぶ入場待機列の密集や、コスプレ更衣室での過密状態などが危険なリスクとして存在しています。そのような中に、一人でも新型コロナウイルスの無自覚症状のキャリアが存在していたら・・・あっと言う間に大規模クラスターの発生が予測できるわけです。
いつまで続く!?イベント中止の連鎖
さて、ここで誰もが気になるのは、この「コロナ禍(か)」によるイベント中止はいったいいつまで続くのでしょうか。
米国マサチューセッツ工科大学(MIT)から、SARS-CoV-2(新型コロナウイルスの正式名称)は「世界の感染の90%が平均気温3〜17℃で発生している」(武漢、イタリア、スペイン、韓国、ニューヨーク/北緯30~50度)という中間報告を発表しています。タイやインドネシアといった冬場でも高温多湿の地域では、発生率が6%未満(ゼロでは無いことに注意)にとどまっています。
このことからも、気温22℃以上で湿度50%以上ではSARS-CoV-2は活動が弱まる、あるいは長時間生存できないと考えられています。同じコロナ系ウイルスで、2003年の冬から一部の地域でパンデミックとなったSARS(重症急性呼吸器症候群)が、その翌年の夏の7月に終息した事実からも、これが新型コロナウイルス感染の"夏"終息論の根拠であり、希望的な観測となっています。
そこで日本がこの条件に当てはまるようになるのが、GW明けで5月下旬以降になるわけです。加えてGW前後からは太陽の紫外線の量も増えてきますから、細胞膜を持たないウイルスは屋外では大半が生き延びられないとされています。
おそらくはこういった意味も含めて、2021年に延期された東京オリンピック2020も、まだ寒さが残る桜の季節の3-4月に開催という声を無視するように夏の炎天下で蒸し暑い7月に設定されたものと理解できます。これは、今年2020年の7月のウイルス感染の状況を見てから、ということなのでしょう。
ただし、この新型コロナウイルスはまだまだ解らないことだらけであり、夏になれば本当に収まるかということは専門家ですら、誰にも断言はできません。この1年間の推移を検証して初めて、推測が正しいのか違ったのかが判ります。
これが最近になり、外出規制は2021年まで場合によっては2022年まで続く、と言われ始めています。このシュミレーションや何万人が死亡するといった数字は「今のままだと」という注釈が付くものであり、ウイルスの解明が進み技術が進歩すればこの期間は短縮されます。
私たち1人1人が今できることを
日本で仮に新型コロナウイルスの感染爆発が収まり、新たな感染者数が減少に向かったとしましても、シンガポールなどでは気温30℃以上でも感染が広がっている事実があります。夏が来ても完全な根絶とはならないだけに、密集するイベントの開催には主催者側としても慎重にならざるをえません。
さらには、北半球はこれから夏になりますが逆の南半球は冬へと向かいます。南半球で生き残ったウイルスが、北半球の冬の到来で11月以降には再び感染が拡大することは容易に予想されます。
そうなりますと「ワンフェス2020[秋]」や「コミケC99」はどうなるのかなど、先の状況を見通すことは非常に難しくなってまいります。
イベントを再開させるためには、とにかくまずは現状の感染拡大を止める必要があります。毎日発表される感染者数の数字を1日でも早く下げることが、通常の日常を取り戻す最も早い近道となります。
2月からの感染の封じ込めに成功した韓国では、すでに外出規制は無く普通の生活となり、街の賑わいが戻っています。
その上で日本でも、新型コロナを気にせず普通に生活が出来るようになるためには、
- 大勢の人が抗体を獲得する
抗体(抵抗力)を持つ人が増えれば、その人が防壁となり感染の連鎖が止まります。 - ワクチンが開発される
本来10年はかかるものですが、早めても1~2年かかるとされています。 - 治療薬が開発される
既存のインフルエンザやエボラ出血熱の治療薬等が使えるらしい、既存薬であれば実験過程をショートカットできるため早く承認が可能となります。
基本的に、ロックアウトのような海外で実施されている厳しい外出規制も、多くの人に免疫ができるまで患者数の増加スピードを抑えて、医療崩壊させないための時間稼ぎの対策でしかありません。そこへ至るまでに少しでも感染を広めない、という努力が社会を構成する一員として今1人1人に求められています
これは、普段から気にかけているインフルエンザやノロウイルスへの対応と同じで、屋内へウイルスを持ち込まないということが肝心です。普段から気にかけていない人は、ググって詳しく調べましょう。
- 外から屋内へ入ったら手洗い、手指の消毒
- 外出中は汚れた手で目の周りを触らない
- 人と接する際にはマスクを着用
- 手すりやドアノブ、電気スイッチなどの手が触れる部分は頻繁にアルコール消毒
マスクは、0.1μmという大きさのウイルスには50~100μmの編み目(スギ花粉:20μm)では効果が無いとされていますが、飛沫の拡散には効果があり、”他人に感染さない為には有効”となります。
また、喉の乾燥を防ぎ保温には効果があることから、気温38℃/湿度90%以上では1時間で1/10まで新型コロナウイルスウイルスが死滅するという実験結果から、感染の防止には(完全ではないにせよ)有効とされています。
イベントはいったいいつになったら再開できるのか
仮に今の緊急事態宣言の効果が出て、さらに気温や湿度の上昇に紫外線の増加などによって、5月下旬か6月頃に感染爆発が終息してきたとしましても、
- 3密が発生するような業態の事業者
- 地域を越えて人を集めるような事業者
は、事業再開は難しいとされています。コミケやニコ超などは、ここにばっちりと該当してしまっているのです。
というのも、新型コロナウイルスは完全に駆逐されるわけでは無く、ピークの人数は今回よりも少ないながらも、第2次第3次の波がくるとされているからです。これは、先ほども書きましたように大勢の人に抗体が作られるまで1年とか2年といった時間で続きます。
そうなりますと、9月の「東京ゲームショウ2020」なども開催は難しいかもしれません。
今後、「ワンフェス2020[秋](11月)」「コミックマーケットC99(12月)」「ワンフェス2021[冬](2月)」などは、TGSのような先行する他のイベントの開催状況をにらみながら、開催可否の判断を迫られることになりそうです。